「走馬燈」

「走馬燈」

それは定食屋の名前

 

学生時代によく通った定食屋

 

いつも頼んでいたのは

とり天定食

 

山盛りが普通の量

味噌汁にカボスを絞り込んで

「いただきます」

 

学生ばかりしか来ない店

油の匂いと飼い犬の匂い

 

歩いて行ける距離には

2軒しか定食屋はなかった

 

寝不足気味の学生ばかりで

ほとんど会話したことも

覚えていない

 

ただ、とり天は

美味しいと言っていた

記憶はあるのだが

その味は覚えていない

 

美味しいって言った記憶が

確かにあるのに

味が思い出せないって

不思議な感覚だ

 

おなかがすいていただけ

だったのだろうか

 

それでも、妙に懐かしくなることがある