カウンター越し

雰囲気のある

バーのカウンター

 

薄暗い店内には

妖艶な女が

グラスを傾けていた

 

客は彼女ひとりだった

 

席を二つ空けて

俺は座った

 

例の女は

こちらを振り返ることもなく

自分の世界に浸っている

 

マスターに頼んだ

 

彼女に

ジャックダニエルを

ダブルで、と小声で

 

こちらをチラリとも見ず

彼女は

ジャックダニエルを

一息に飲み干した

 

カウンター越しの

世界は何も変わらない

 

俺は透明な小皿の上にのった

木の実を

彼女の前に

スライドさせてみた

 

さすがに彼女はそれに気づき

俺の方を見た

 

俺は言った

「リスになってみないかい」

 

彼女は笑って

アーモンドを半分かじった

 

カウンター越しの風景が

すこし変わった