スポットライト

場末の客席から舞台の上へ

色彩を放って仮面を照らす

 

あなたとあなた

そして、あなたも

次々に映し出されていく仮面

 

あげくに、探し出されたあなたの唯一

スポットライトがあなたの仮面を穿ち

ペルソナの裏側まで剖出してしまう

 

赤裸々に放り出された心象に

観衆は動揺する

脳に組み込まれた「常識」の

電気回路はショートし

新しい血液が注ぎ込まれる

未知のシナプスが連絡網を張り

観衆は生まれ変わる

 

スポットライトの一歩外側に

暗闇の世界

ペルソナの幹細胞群が

自己複製と細胞分化を繰り返し

スポットライトの中心めがけて

ベクトルの矢を延長していく

幹細胞は成熟し、一つの仮面を生む

 

隠せぬ驚きに

観衆のまなざしが

舞台の上のペルソナたちの装いを

芝居の文脈と交叉させながら

意味のある存在へ

次々と転写させていく

 

スポットライトの閃光が

観衆の視座そのものであることに

気づいてしまう変異種たち

 

そこから

新たな増殖が繰り返されていく

 

無類の感性が生成し

スポットライトを焼き尽くす

スポットライトはその役割を終え

舞台と観衆は融合していく

 

 

(詩と思想 土曜美術出版販売 2014.03.入選作・改訂)