パンの耳

違う学校に通う

同い年の友達が

食パンの端っこの部分

だけを持って

おいしそうに

かじっていた

 

小学1年の僕は

聞いてみた

「それなに?」

 

友達は

「ニシムラトオル」

と答えた

 

僕は

「どこに売ってたん?」

と聞くと

 

「あそこの駄菓子屋」

と答えたので

 

僕も食べたいと

いちもくさんに走って

「あそこの駄菓子屋」

へ買いに行った

 

 

「おばちゃん、

ニシムラトオル、ある?」

そうたずねると

 

店のおばちゃんは

「そんなもん、あるかいな」

と半ば怒ったように答えた

 

勘違いが2重に重なったようだ

 

僕は「パンの耳」という言葉を

知らなかった

 

母は言った

「聞くは一時の恥、

聞かぬは末代の恥」

 

わからないときは

引き下がらずに

うやむやにせず

その場で解決しろ

ということだと,

すぐにわかった

 

パンに耳があるなんて

知らなかったよ

 

そもそも

駄菓子屋に

パンの耳が

売っていたのだろうか

 

謎は深まるばかり