ミッドナイト・フレグランス

バーのカウンターの片隅で

グラスを見つめていた

 

ジャズの音楽に紛れて

足音が近づいてきた

 

ひとつ離れて

座って足を組む

赤いピンヒール

 

緊張感も

会話も

ないまま

ピアノの音だけが

流れ続けた

 

日常から離れた

独りの心地よさを

邪魔されたくなかった

 

曲が変わったところで

店を出た

 

背中を追いかけてくる

足音には

忘れかけていた

あのクリードのフレグランスが

漂っていた