伝言

伝えておかないと

いけないことが

たくさんあるんだ

 

今の二〇代以下の人達へ

 

わたくしは昭和の時代に

生まれた五十代の人間

アナログとデジタルの

比率が逆転した時代に

生きてきた

 

君たちは

それどころか

アナログ的生活が消え

デジタルだけに依存した

新しい社会が訪れる

AIの時代だ

 

一つだけ、伝えておこう

 

私たちは

言葉に関わりを持つとき

紙や本という感触を伴った環境媒体で

様々な匂いを感じ、

必要な情報以外の

目的とはほど遠い偶然の出会いを

たくさん経験し、鳥瞰的発想が

得意だった

 

例えば、

本屋に行って無目的に本を選んでいる内に

想像だにしない書物に出会うチャンスがあった

ネットで本を探す時は欲しい本を注文することが

ほとんどで、

意外な書物との偶然の出会いの確率は

本屋に足を運ぶのに比べて相当低い

 

わたくしたちは、

言葉と出会う時

3次元の座標軸のなかで

偶然性、匂い、非合目的性を感じながら

言葉との関係性や距離感を図った

 

アナログ的な生活とはそういうものだ

 

これからの世代は

2次元の平面の中で

必然性と無臭と合目的性に包まれて

情報の加速度化に

言葉との距離感が分からなくなる可能性がある

デジタル的な生活が必然となる

 

行き詰まりや閉塞感に苛まれたら

アナログ的な発想を

振り返っていただきたい

 

15年くらい経過したら

きっとこの拙い文を読んで

救われる人もいるだろう

 

情報をアクセス速度だけで考えてしまう癖がつくと

大切な言葉を見落としてしまうことがある

 

20代以下の方々に

伝言しておきます