壊れた時計

壊れた腕時計

時が止まったまま

秒針すら

微動だにしない

壊れた腕時計

見つめているうちに

過去のワンシーンが

とぼけたモノトーンの

風景を浮かび上がらせた

腕時計は

止まったままなのに

心臓の拍動は

止まることを知らずにいる

刻まれた時刻は

真夜中の風

修正してはいけないと

ちいさく呟いて

無造作に本棚の片隅

放置することにした

いずれ

ほこりまみれになって

壊れたことすら

わからなくなるだろう

壊れた時計に

気をとられていては

いけない

現在に生きる

未来に生きる

時計がなくても

時は過ぎてゆく

時は流れてゆく

時計などなくても

こころは生きてゆける