月夜に想う

霧島へ

高千穂峰の

深い山を

頂へ向けて

歩みを続けると

次第に視界は

樹木の悪戯から

遠ざかっていく

 

中秋の名月に

出会うには

格好の頂であった

 

降臨の神話を

月が明らかにした

今宵の月は

何とも頼もしい

 

あの時代に

胴太刀を外して

か細き手首を

握りしめたまま

眺めた月は

この

ため息の出る

おぼろな輪郭を

持っていたのか

 

龍馬よ

わたくしに

耳打ちでよい

あの月夜の

語り部と

なってはくれないか