蘇芳色の原石

終わった愛がいました

終わった愛は

冷たくて

無色で

丸くて

どこから見ても

同じに見え

 

川の中を下流まで

流れに身を任せて

陽気に思いのまま

転がり続けていました

 

流れが緩やかに終わってしまうと

沈んで動かない

小さな石に

変わり果てていました

 

その時初めて

自分の周りに

愛する相手の石が

いないことに気づきました

 

そして、ことさらに

信頼、思いやり、献身の

本当の意味も分からないまま

海の底へと消えてしまいました

 

始まった愛がいました

始まった愛は

あたたかくて

赤くて

でこぼこで

どこから見ても

違って見える石でした

 

愛する相手の石は

とても大きい頑固ものですから

上流にあって、動きません

 

川の流れに身を任せて

流れていくと

無色の丸い小石と同じ運命を

たどるやしれません

 

だから表面にこけが付いて

流れ出しそうになっても

くいしばって

上流にとどまろうと考えました

なぜなら

信頼と思いやり、献身の

本当の意味を知っていたからです

 

それは蘇芳色の色彩を放つ原石のようでした