蘇芳色に影を落とす

薔薇が色褪せていく。

 

このまま、うつむき加減で

力を失っていけば、

線香花火の最期の一雫

重力をうとむ情象が

蘇芳色の面影を残す

 

薔薇の陰影は姿を変えて

旅立ってしまった

行き先を知る棘だけが

深緑の鋭角に縁取られたまま

遠い影を見送っている

 

儚さは、赤い幻影を生み

曼珠沙華の眩しさに

引き寄せられて

赤い打ち上げ花火の観照

をかたどる

 

つかの間に

曼珠沙華も姿を消し

蘇芳色は連鎖を絶ち

モノトーンの

乾いた香ばしさへと

継がれていく

 

 

 

( 詩と思想 土曜美術出版販売 2016.04 入選 )