見上げる空に

低い雲の連なりが

初冬の肌寒さを助長する

 

しかしその間に

透明な青い空が広がっているのに

気がついた

 

その途端、

心も晴れやかに感じられ

胸を張って前を歩きたい気分になってきた

乾燥した冷たい風は吹いているけれど

それですら心地がよい

寒いけど、暖かい。

そんな感覚で満たされた

 

振り返って思い浮かべると

そんな場面がこれまでに何度もあった

 

灰白色と青色の交錯がバランスを失って

透明に変わるとき。

それは予定調和のあるコペルニクス的転換

いつも、わたくしはそれを待ち望んでいて

覚悟を背負って歩いていた

 

こむら返りしたハムストリング筋が

激しく収縮したあとに

どういうわけだか

元に戻って存在感を消してしまう

それですら、わたくしにとっては

色彩の変化でとらえられた現象なのだ

 

よかろう・・・と中庸して

再び見上げた空には

無尽蔵な空気の粒子が

自己複製と増殖を繰り返していた

挙げ句の果てには

あくびをしたかとおもうと

分化してあちらこちらで

ほほをつたう水滴になりすまして

様子を伺っている

なるほどこれが現実なのだと

頬杖を付いて

わたくしからもあくびをたれた

 

 

・・・透明な青い空・・・

マクロでは実体のない虚無なヒロイン

恍惚とした感性を抜け出して

いかなる場面であっても

リアリティを秘めたヒーローに変容する

 

純粋な視覚情報を拠り所にして

空を見上げさえすればいい

 

 

( 詩と思想 土曜美術出版販売 2015.06  一部訂正)