遠い日の励まし

ある病院の

救急外来での出来事だった

 

中学入試の数日前に

インフルエンザの少年

 

そのとき

「大丈夫。

君は運がいいよ

入試前に

僕の外来で

出会った子は

みんな合格する

ジンクスがあるんだ

試験の当日は

体調がベストとは限らない

たとえ、ふらふらでも、

その時の

自分のすべてを

ぶつけてやればいいんだよ

他に何が出来る?

這ってでも

試験会場に行きなさい

倒れたら点滴してあげるから

自分のすべてを

ぶつけてきなさい」

 

そう言って、

僕の書いた

『折らんかい』という詩を手渡した

 

そんな話をして6年後

お母さんと二人で

今のクリニックに

挨拶に来てくれた青年

 

中学入試は合格できました

今度は、

医学部に合格しましたと

 

よかったね。

おめでとう。

 

どうか、

人のために

全力を尽くす

医師に

なって下さい

 

これからも、

ずっと、

応援しています

 

今日は忙しい日だったけど

再会できて

とてもうれしい

一日になったよ

 

二人は

僕が処方した薬ではなく

その時伝えた言葉に

感謝してくれている様子だった

 

薬だけでは超えられない壁がある

だけど薬と言葉を足し算すると

その壁が越えられることもある

 

ありがとう。