助手席

助手席の流れ髪

少し開けた窓から

入り込む風が

あなたの香りを誘う。

いつもの所で

ドアを閉じて

遠い瞳で

見送っている。

気を取り直して

カーラジオの音量を上げ

アクセルに少しずつ

力を込めているうちに

自分の世界に戻る。

残り香もいつの間にか消え

信号で停止しているうちに

真っ白な助手席に気付く。

寂寥感に耐えられなくなって

鞄を助手席の上に投げる。

流れ髪が鞄に変わってしまっても

やはりあなたがいるような

気持ちで車を走らせている