とびら
ここはどこだろう
吹きさらしの秋風
手が かじかんでいる
ブリキ細工の取っ手の付いた
アンティークなステンドグラスに
かたどられた扉の端には
蜘蛛の糸が垂れている
空想たくましく
あれこれ考えて
中に入っていいものかと
躊躇する
夢物語を感じながら
おそらく
誰も住んでいない
眼前の洋館を見上げる
思い切って扉を開く
中は暖炉で暖められたような
ぬくもりの世界が待っていた
冷え切った手が次第に温まって
正気を取り戻す
ここは未来への扉
あるいは
恋の入り口かもしれない
中にはあなたがいるようで
心が急に動き出した
街角ですれ違った
あなたのことを想っていた
だけど街角を歩かなくても
あなたはここにいた
秋風が扉を閉めた
あなたは真剣な微笑みで
僕の手を暖めている
I love you.と囁いている
風の声
あなたの声
僕の幻
僕の現実