言葉を待っている
言葉を待っている
言葉は魔術
口承は文字よりも確か
ラブレターよりも
直接伝えることのほうが
魂に届く
文字を介して
記録する文化を当然と
我々は考える節があるが
口承文化を五世紀にもわたって
維持している民族もいる
たとえば
エチオピア南部のボラナ社会は
無文字社会であり
口承だけで歴史を正確に刻んでいる
確かに文字を介する記録ではなく
口承という一見曖昧で
正確な再現性に欠ける手段で
歴史を伝えるには
別のシステムが機能している
それにしても
口伝えの言葉が文字よりも
その文化にとって
価値があるという発想が
残っているのだろう
だから
わたくしも、言葉を待っている
言葉がなければ
生きている世界自体が
存在しないことに等しい
発信する言葉が生成すれば
受信する言葉は事象の引き金になる
言葉を待っている
言葉は魔術
発信できなければ魔女にはなれない
もちろん
受け取るアンテナを
持っていなければ成立しない
言葉を待っているとは、
毛繕いを待つことと同じかもしれない