忘れ得ない光景

忘れ得ない光景がある

小学生の時

僕は5年生

グランドで野球の練習に

汗をかいて息を切らせて

賢明に白球を追いかけていた

楽しかった

きっと誰かが見れば

楽しそうだと感じただろう

ふとグランドの外側に目をやった時

金網を握りしめながら

うらやましそうな曇ったまなざしで

僕たちを見ている6年生がいた

重そうな鞄を抱えていたから

これから塾へ行くんだろうな

勉強って大変なんだろうな

よく我慢しているよな

有名な中学校へ行かされるんだろうな

いろいろなことが頭の中を渦巻いた

そうこうしているうちにその6年生は

母親に小言を言われながら去って行った

金網を握りしめていた手

羨ましそうにものを見るまなざし

したいことも出来ずに我慢している表情

僕は一生、

この3つを人に気づかれないように

生きていこうと思った

あの忘れられない光景

あの子は今頃

どうしているのだろうと

想うことがある

思うに

その歳の頃にしかできない

ことがある

子供の頃には

子どもの時にしか

経験できないことがある

それを

やり残さないように

生きていたい