夜と霧

年をとって

自分では

できないことがあれば

お互い様に

寄りかかり合いながら

生きていけばよい

慣れ親しんだ日常を

見ず知らずの

他人任せにされて

嬉しい人はいない

長く生きてきた道程

それが正当に

評価されるのは

歳をとった時に

初めてわかるもの

残念ながら

多くの介護施設にありがちな

無機質で

心の刺激少なく

やっつけ仕事的な

コミュニケーションに

囲まれた空間では

人間の感情は

平坦化してしまう

感情の鈍麻が起こるなら

その場所は

アウシュビッツの収容所と

何ら変わりがなくなるだろう

暖かな思いやりは稀有で

医学的管理の目標でしかない

無機質な白い壁に囲まれた空間

病院は質的な変革が求められて久しいが

今の所、何ら30年前と同じだ

高度医療を提供する場であればあるほど

リエゾンコンサルテーションにとどまらず

快適な心の環境を提供する場でなければならない

小児科病棟にはその工夫があるが

大人、特に高齢者主体の病棟では

充足がない。

緩和医療病棟なども

本当に快適な心の環境を提供する場に

なり得ているのだろうか

想像するに、不安が募る

フランクルの「夜と霧」

読んだことがあるだろうか

もし、読んだことがなければ

医療者として一流とはいえない。

辛口評価ではなく、

わたくしの中では、

いくら最先端といえども

医学書しか読まない医療者は

凡夫でしか、あり得ない。

わたくしだけの言ではなく

かの、ジョンホプキンス大学

初代内科教授の

ウイリアム・オスラー卿が

はるか昔に啓蒙した言である。

「病気だけを診るのではなく

病人を診よ」

それば全人的医療の原点でもある。

患者の日常に寄り添えるに足る

教養を持つことは

一流の医療者の

ボーダーラインであることを

付け加えておこう。