眠れるコテージの淑女

湖畔の静かなコテージで

ソファーに寝そべるのも

悪い気がしない

暖炉の火が創る幻と

優しい珈琲の香りに包まれて

窓の外を眺めている

穏やかな降雪の中で

水面は眠りに落ちた淑女のように

小さな吐息を立てている

時折、薪のはじくような音が

鼓膜をかすめるが

部屋の中には

ナラティブなジャズが

ゆっくりと流れている

時計を置かない部屋では

時間を意識することもなく

自分らしく過ごすことができる

テレビもないから

煩わしい世事のノイズも

届いてはこない

湖畔の静かなコテージにあるのは

欺瞞の片鱗も存在しない、

わずかなぬくもりだけ

ぬくもりだけに包まれて

そっと眠りに誘われてゆく