デュエット

蒸し暑い8月の夜

雨音とコオロギの鳴き声

アンバランスなおかしみ

例年、そうだったろうか

首をかしげて立ち止まる

月は暗雲に隠れ

傘を弾く雨の音

コオロギの羽音

真夏の二重奏は

しばし継続する

とめどなく降り重なる雨が

紫色に輝いた

その時、

コオロギの鳴き声が消えた

個々の事象は何一つ

独立して存在してはいない

何らかの関係性の上に立つ

孤高の人間としての生き様に

あこがれはあるものの

人間はどう頑張ったところで

「ひとり」では生きてゆけない

人間存在の最小単位は

「ふたり」であるに違いない

なるほど人という字は

「ふたり」の人間が寄り添っている

紫色に輝く雨と

コオロギの鳴き止みが

人間存在のあり方を

教えてくれた気がした