現実との境界に響く音

急に音がした。

深夜の書斎

手元の明かりだけで本を読んでいた

少し溶けた氷がグラスを揺らす音だった

氷の溶ける音が

僕を現実の世界へと呼び戻そうとした

一口だけ飲んで

再び本の世界へ戻ることにした

もう一度、氷の溶ける音が響いたら

ページを閉じることにしよう

そして今度は眠りについて

夢の世界に身を置こう

朝になって目覚めるときには

音はいらない

5時間もすれば勝手に

目が覚めるはずだから

すっかり忘れていたときに

予想外に響く

少し溶けた氷がグラスを揺らす音

僕はその音の透明感に惹かれていた