国木田独歩の「少年の悲哀」

国木田独歩という作家の小説に「少年の悲哀」という作品がある。

昔、僕が読んだその小説のあらすじは、こうだった。

自然をこよなく愛する一人の少年が主人公。彼は、空を自由に飛ぶ鳥たちに深い憧れを抱き、自分も鳥のように空を舞いたいと願う。その純粋で無垢な夢は次第に彼の心を支配し、ある日、少年は本気で飛べると信じて木の枝から身を投じる。しかし、当然ながら彼の体は地上に落ち、命を失ってしまう。作品は、現実を知らぬ少年の死を通して、人間の理想と自然の真実との衝突を静かに描き出している。その結末には、愚かさでは決してなく、夢を信じる心の尊さと哀しさが心を打たれる。

その話を息子にしたところ、彼も読んだが、内容が全然違うというのだ。

主人公は、まだ少年と呼べる年ごろの感受性豊かな青年。あるとき彼は、美しくも心を打つ一人の少女と出会い、淡い恋心を抱く。しかし、その思いは実らず、彼はひとり悲しみの中に沈んでいく。少年は、恋の切なさや孤独、自分の無力さを痛感し、その思いをどうすることもできず、胸の中で葛藤する。彼にとってそれは初めての深い悲しみであり、同時に「人を愛すること」「生きること」の痛みを知る体験でもあった。

同じ題名の小説が2つあるわけではない。改稿されて、別の主題を同じ題名で示したのだろうか。独歩に何が起こり、どういう理由で、全く違うストーリーになったのだろう。機会があれば、国木田独歩を研究して、深掘りしてみようと思う。なぜ、変わったのか?突き止めてみたい。