緑の奈落
電話がかかってきた
会うことになって
電話が切れた
・
気がつくと
電話をかけてきた人物の
家にいた
しかし来たこともない場所
とっさに現在地点を調べようと
スマホを手にしたが
相手が鋭い目をしたので
やめておいた
・
その家の主人が犬を連れて帰ってきた
その人物も見たことがない
犬は悲しそうな目でこちらを向いている
なんとかして逃げたまえ
君も犬にされてしまうぞ
そんなふうに犬の目が語り出した
・
わたくしはトイレに行くふりをして
トイレの窓から身を乗り出し
家の外に脱出した
・
ところが家の外は
緑色の三次元空間が空っぽのまま
底なしの異空間へと滑り落ちていった
・
電話がかかってきた
奈落の底の気分はどうだ
そう言って電話が切れた
