みずうみ
湖に浮かんだ白いディンギーが
音も立てずに揺れていた
ひっそり閑とした
朝もやの隙間から
わたくしの心象と同調する
湖面を揺らす微々たる波に
感情が乱れることもなく
ただ穏やかに、穏やかに
日の光が立ち上るしたたかさに
自然の気配を感じていた
・
わたくしはいつの間にか
ディンギーの上で揺れていた
水墨画に描かれた情景に
染められそうになり
自分の腕をオールに見立てて
ディンギーを漕ぎ始めた
連綿と続く蓮の間を横切りながら
湖畔にたどり着いた
・
土壌に凝り固まった浮世を
足元に感じながら
何も変わらない湖面の風景を
振り返ると
やはり
湖に浮かんだ白いディンギーが
音も立てずに揺れていた
