『不死鳥伝説』 第3章 〜病〜
不可避な〈病み〉が忍び寄る
免疫システムはそれと対峙するが
限界が訪れる
色味がかった草木が腐食する
水脈の歪んだ沼地で
白蛇は、方角の悪い風を受けとめた
逆らって、とぐろを造形しているうちに
まぶしいほどに白い、湿性の硬い皮膚から
〈病み〉が入り込んだ
蛇体はゆっくりと温度を失い
紫青色の石灰と化した
動かぬ石灰の中で
気高い白蛇は、回想した・・・
理由づけ困難なひとつの幻が光った
かつて、沼地のそばにある大木に昇り
太陽への祈りを捧げていたとき、
雲の隙間に、原色の輝きを放つ炎の鳥が
白蛇の方位に首を屈折し、
うなずきを露呈した。
泥酔のごときあれは何を意味していたのか
ただそれを回顧するだけで
あの炎が自分の中にもあると信じた
内なる燃焼が真実の語り部となり、
体温の蘇りと石灰の溶解する音が聞こえた
紫青の石灰は、音を立てて崩壊していった
これは脱皮である
真っ白な輝きを取り戻した白蛇は
再びあの沼地のそばにある大木に昇り
太陽への祈りを捧げた
遙かなる時空で、その様を、
フェニックスは鳥瞰していた
フェニックスにとって
〈病み〉は非日常の
カーニバルでしかなかった