空蝉(うつせみ)
蝉は早朝に
空蝉を残して
木に登っていく
明るい間に鳴き
暗くなると鳴き止んで
土の中へ次の世代を回帰する
次の朝、
自分の空蝉を枕に
一眠りした後
蟻に運ばれていく
切なくて美しい
自然の摂理
逆らわずに
輪廻を繰り返す
蝉の鳴き声が
脈々と五線紙に
自然の摂理という
リズムを刻み込む
少年は
蝉の鳴く木々のまわりで
虫取り網を
振り回しながら駆け巡り
老生は
蝉の鳴く木々に近づくと
空蝉を探しながら
五線紙のリズムを確かめ
ゆっくり歩いて
通り過ぎる