合 鍵  (III)

電話が鳴った

真夜中の電話

 

郵便受けに

鍵を投げ入れる音を聞いた後

しばらくたった頃

 

「神戸に転勤になりそう」

<・・・、そう>

無理して興味のないふり

 

声をふりしぼって、伝えた

<元気でね>

「・・・」

そのまま電話は切れた

 

 

3・11

 

 

新聞の確認欄に

名前が載っていた。

ステンドグラスの破片が

胸に突き刺さって

通り抜けていった

 

それ以来

あの頃の日々は

心の風景から抹殺され

記憶から消えてしまった

 

あるきっかけで

少しずつ思い出し始めたとき

あの時、あの瞬間、

<そばにいて欲しい>

そう言えたなら

再びヒールの足音が

聞けたのではないかと

後悔と懺悔に苦しめられた

 

本当に、最期だった。

 

あと一言を声に出せない

せつなさに裏切られてしまった

 

 

今はもう

名前さえ、思い出させてくれない