カトレア

カトレアの花

 その姿を見るには

まだ早いが

紫色のカトレアが

好きだ

優美な女性を

見ている気がして

どうしてか

魅了されてしまう花

心地よい

音楽のような風が吹いて

香りのラブレターが届く

カトレアの花を

そっと抱きしめて

誰もいない砂浜に座る

潮風が時を告げる

黄昏になれば花を手折って

胸ポケットにしまい込む

それでも

紫色のカトレアは

照れくさそうに微笑んで

記憶を失って

誰だかわからなくなっても

わたくしの心の奥で

眠りにつく