世の中ってさあ
京都駅の構内にある
地下鉄から第1ホームに
上がっていく長い階段
登って行くときに
つまずいて倒れてしまった
確か大学院生の時
バイトからの帰り道
疲れていて
ふらっときて
階段を踏み外してしまった
膝を打撲して
痛くて動けない
長い階段の途中
倒れ込んだ
人の波は絶えることなく
僕を避けるように
急ぎ足で通り過ぎて行った
「大丈夫ですか」などと
声をかける人はおらず
誰ひとり、
振り返るでもなく
僕が倒れ込んでいることに
まるで気づかれていない、
そんな様子にも見て取れた
痛みがおさまってきて
再び長い階段を
足を引きずるように
歩き始めたとき
思ったのは2つ
一つが、
「世の中ってさあ・・・」
もう一つは、
川の流れを何気なく見ていた
場面を思い出した
大きな岩が川の真ん中にあって
流れる水は素知らぬ顔をして
流れを止めることなく進んでいく
「あれに似ているよな。」
「岩に似ているよな。」
川の中で大きな岩が
岩肌を見せているのを眺めると、
自分と岩を比べてしまう
あの岩は、
どんな気持ちで
あの場所にいるのだろう