時を刻む声

確かに

時を刻む音が聞こえた

肌を焦がす熱い砂浜に

たたずむ二人の影の中

それは時計が時を刻む

機械的な反響ではなく

涼しげな風鈴が奏でる

風のゆらぎの様だった

そういえば

雨が降り始めた時の

風の匂いが好きだった

春が訪れ始めた時の

風の匂いが好きだった

そよ風の囁きを感じる

微小な感性が手を繋ぐ

その間隙に浮遊する影

動きの止まった面影に

時を刻む音が聞こえた

時を刻む音は

晴天の悪戯で芽生えた

影を穿つ雨音だろうか

五線紙の上で揺れ動く

風の匂いの残香なのか

知る由もなかった

遠い佳景を仰見ながら

静かに

時を刻む音を確かめた

遥かに

時を刻む声が聞こえた