『不死鳥伝説』 第1章 〜生〜

蒼色の神馬がどこまでも無機質な

真冬の月夜に駆け抜けていくという

 

ほら貝のかなでが

静寂の中に消え去ったとき

頭上彼方から

蒼色の流星群が訪れ

神馬は

生まれ出づる一瞬を迎え入れた

 

そして、伯楽は見た。

流星群の流れの中に

一頭の神馬が、戯れに

紫の粒子をまき散らしながら、

無尽蔵な黄金の光を涙している

パノラマを

 

しかし一方で

さらに

無限の素粒子が結合した

紫水晶の小さな塊の中で

背中を湾曲して

指を吸てつし

胎動をおこしながら

この世への

生誕を待機する生命が存在していた

 

その生命体は

翼の成就に切望を仕向けていた

 

折り重なったクリスタルの羽が

めきめきと音を立てる

 

完成が近づいた

いよいよだ

空間座標がゆがみ、よどむ

 

そして飛び立つ神馬のゆくえに

無数の生命体が集合していく

 

一塊の奇跡

 

紫の結晶は融解し、炎が乱舞する

黄金の光沢をもつ、

巨大な羽が優雅にそよぐと

座標のゆがみは消失し

伝説は解き放たれた

 

フェニックスが、

まぎれもなく現れたのである