あの頃の感傷

梅雨時の

雨の匂いを感じながら

傘を差して歩いている。

雨の降り始め

アスファルトの夢が

溶けている。

まったくの独り。

とぼとぼと歩いてみたり

颯爽と歩いてみたり。

やはり独り。

寄りかかる肩もなく

自分の足を

右を左をと

動かすため、

うつむき加減に

背中を丸めている。

アスファルトを溶かす

雨の匂いが

混沌とした感傷に

味方してくれている。

独りではない。

アスファルトの熱に

蒸発してゆく雨の匂いに

支えられている。

独りではない。

そう言い聞かせていた

あの頃の感傷。

青年期を支えていた

雨の匂い・・・

時に、思い出す。