あの頃

あの頃、

医学生のとき

白衣に初めて

腕を通した瞬間の

うれしさ

照れ臭さ

白衣がやけにまぶしく思えた

ようやくこの時が来た

そんなふうにも考えた

そして不安

白衣に相応しい医師に

なれるのだろうか

揺らぐ気持ちをかき消すように

医学書に取り組んだ

実習で患者様に真剣に向き合った

知ったかぶりをせず

わからないことは先輩や本物の医者に

質問を繰り返し

学び取った知識と

元来持ち合わせている観察力を

駆使して懸命に取り組んだ

あの頃の

新鮮で純粋な医学生の時の

心のありようが懐かしい

経験を積んで

患者様に幾許か頼られるようになるには

少なくとも、10年はかかるだろう

経験値はとても大切だが

それにも増して

医学生の時の純粋な判断力は尊いと

思い返している

医者は、患者様によって育てられる

その謙虚さは

どんなに経験値が上がっても

忘れてはいけないこと