いぬ

僕はねえ

犬が好きだったんだ

 

小さい頃ね

近所の牛乳屋さんで

白い子犬が

3匹生まれたんだ

 

どうしても

欲しくて

 

羨ましそうに

見えたんだろうねえ

 

おっちゃんが

一匹くれたんだ

 

壊れそうなくらい

抱きしめて

家に帰ったんだ

 

でもね、

家では飼えないって

返してこいって

だから、

返しに行ったんだ

 

それで、犬、諦めたんだ

 

 

小学4年の時にね

山に虫取りに行ったとき

 

近くの家から

たくさんの犬が逃げ出して

その中にいた

ドーベルマンに

追いかけられたんだ

 

僕はとっさに

木に登ったんだ

 

ドーベルマンは

僕のジーンズにかみついて

引きずり落とそうとしたんだ

 

怖くて、怖くて

もうそれ以上

どうやって逃げたらいいか

わからなくて

頭の中が真っ白になったんだ

 

タイミングよく飼い主が現れて、

僕はケガをせずに助かった

 

一緒にいた友達もね

別の木に登っていたんだけど

引きずられて

足を噛まれたんだ

 

それから

その場所へは

一度も近寄らなくなった

 

ほかの犬も怖くなってしまった

犬が嫌いになってしまったんだ

ドーベルマンのせいさ

 

子犬も怖くて

犬自体が信じられなくなった

突然、愛しい生き物であったものが

たちまち、悪魔に変わってしまった

 

よくわからないんだけど

ネコも嫌いになった

 

 

高校の時

仲のいい友達の家に

遊びに行ったら、

ネコがいたんだ

 

すぐ帰ろうとしたけど

ソファーに座った僕に

近づいてきて

僕の膝の上で

寝てしまったんだ

 

 

仲のいい友達の家に

大きなシェパード犬がいたんだ

室内を自由に出入りしている

僕はすぐに帰ろうとした

 

ところがその犬が

おびえる僕の顔をなめて

そのあと

僕の前で仰向けになって

こっちを向いている

 

友達に言われるがままに

お腹を撫でてやったんだ

 

その犬は僕にしっぽを振って

抱きついてくることはあっても

吠えたり、かみついたりせず

おとなしくしてるので

頭をなでてやることが

出来るようになったんだ

 

本当は

動物に好かれる

たちなんだろうか

 

でもね、

いまだに

ついつい

ドーベルマンのことを

想い出してしまって

穴の空いたジーンズを

想い出してしまって

怖くなるんだ

 

だから、

犬とは一緒に暮らせない

だから、

猫とも一緒に暮らせない

 

別に、

それでもいいと思っている

 

もし、

柴犬を飼うなら

「バン」っていう名前をつけたいよ

 

番犬の「バン」さ