おとこ と おんな 〜この深遠なる存在〜
どうすることもできない不具を
かかえながら、
おとこは孤独に生きて行かざるを得ない
おんなはそれに耐えることができない
さしずめ、
どちらも善悪の問題で解決できはしない
つまりは、
おとこ と おんな は 違う生き物
ある映画を見た
「ザ・ワーズ 盗まれた人生」
ある喪失体験をきっかけに
おんなは家を出る
決して、
おとこのせいでもなく
おんなのせいでもなく
突然訪れた喪失体験
おんなはそれに耐えられなかった
一人になったおとこは
渾身の想いを小説にして
おんなに送った
原稿の入ったカバンを
おんなは列車に置き忘れ
その小説は永遠に葬り去られてしまう
おとこは
こどもの命、おんな、小説
三つの大切なものをすべて失い
質素で孤独な人生を送る
おんなは新しいおとこと
幸せな生活をはじめる
おとこはたまたまそれを
目にして、ほっとする
おんなが幸せでいてくれたと
時代は大きく流れた。
ある青年が
アンティーク・ショップで
買ったカバンに偶然入っていた
小説の原稿をよみ
それを自分の名前で出版し
人気作家となる
そこへ一人の老人が現れ
その小説の背景を語り出す
オレの人生はお前に盗まれた
そう言い残して日常に戻っていく
その青年も大きな懺悔を背負って
裕福だが孤独な人生を送る
この作品を見ながら
40年ほど前に読んだ
森鴎外の舞姫や
芥川龍之介の羅生門
ドストエフスキーの罪と罰などを
組合せながら、次々と思い浮かべていた
ラスコーリニコフの言葉だったか、
苦しむことも一つの才能
そんな言葉も思い出した
そして、
どうすることもできない不具を
かかえながら、
おとこは孤独に生きて行かざるを得ない
おんなはそれに耐えることができない
そんな言葉がどこからか
わざわざ
わたくしの所へ舞い降りてきた
この深遠なる存在
おとこは夢の中に生き
おんなは現実の中に生きている