おとぼけ柴犬、迷子になる
顔と手に怪我をした柴犬が
道を飛び出そうとしました。
一人の女の子が柴犬を抱きかかえ、
間一髪のところを助けました。
その様子を見ていた大勢の友達たちが
「大丈夫?」って集まってきました。
みんなが心配している中、
柴犬はおとぼけ顔でニコニコしていました。
「この犬どうしよう?」
みんなで相談して、
近くのバスターミナルのおじさんに
相談しに行きました。
「うちじゃ、預かれないよ」
そう言われてみんなはがっかりしました。
すぐそばにある消防署へ行きました。
「うちじゃ、残念だけど、預かれないよ」
やはりそう言われました。
みんなで学校へ連れて行くことにしました。
先生に相談してみました。
すると先生は
「それはかわいそうね。
なんとかしましょう。
警察に相談してみましょう。
飼い主が探しているかも
しれないですからね。」
先生が電話をしている間、
みんなは心配そうに、
柴犬を交代で抱っこしたり、
頭を撫でてあげたりしていました。
柴犬は相変わらず、
おとぼけで楽しそうにしていました。
先生が、走ってやってきました。
飼い主が見つかったのだそうです。
よかったね、おとぼけ柴犬。
飼い主が学校まで迎えに来ました。
心配して探していた飼い主は
ぎゅっと抱きしめました。
それでも柴犬は、
とぼけた様子でした。
飼い主が大切そうに抱きしめて
校門から出て行く時、
おとぼけ柴犬は
女の子たちの方を見て、
大きく「ワン」と吠えたのです。
女の子たちは黄色い声で大騒ぎ。
バイバイって、手を振りました。
あの「ワン」って吠えたの、
きっと私たちにありがとうって
言ってたのよね。
違うよ「あばよ」くらいじゃない。
みんなで大笑い。
予想もしなかった、
突然の、楽しい出来事でした。
おとぼけ柴犬は、
おとぼけのまま帰って行きました。
もう、道に迷わないでね。