くすし(医師)

今となっては昔のことですが

「医師」とは「くすし」と

呼ばれていました。

今から思えば

医療技術的には

未成熟な時代の医師は

薬のさじ加減で

医術のスキルを磨いていました。

今は医療技術が進歩し、

医師は一定のエビデンスと

個々の経験則に基づいた

診断と治療を担う立ち位置と

なっています。

どのような薬を出すか。

それは診察した医師でなければ

わかりません。

そして

出来るだけ投薬の理由を説明して

処方することに努めますが、

言葉のやりとりの中で

十分に伝わっていないことも

あり得ます。

確かに医薬分業で

医師が処方した薬の説明を

薬剤師が説明する形を

とるようにはなっていますが

医師の判断処方と

さまざまな院外薬局の

薬剤師のお薬の説明に

矛盾が起こることもあります。

悲しいことです。

例えば、

抗生剤の全量内服を考えて、

4日分処方したとしましよう。

ところが、

薬剤師が、

抗生物質は熱が下がったら

早めにやめた方がいいなどと、

医師の考えた判断とは

おおよそ違うことを

説明したとします。

結果、

熱が下がって

抗生剤を2日分でやめ、

その2日後に再発熱して、

中耳炎を合併して

再診察に来院されることに

なってしまったなんてことが

本当にあるのです。

嘆かわしいエピソードです。

私は真剣に詰め将棋をして

処方薬を考え、

量と投薬期間を設定しています。

それが裏切られると、

病気は治らないことがあるのです。

壊された信頼関係。

心外です。

咳が強くて、

ヒト・メタ・ニューモ・ウイルスや

RSウイルスが流行している時、

呼吸状態を考慮して

鎮咳薬と一緒に

ステロイドのシロップを処方することも

時にはあります。

十分検討した上での判断です。

胸の音を聴診し、

発熱の加減や

全身状態を見た上での判断です。

ステロイドのリスクも

いつも考えた上で処方しています。

ところが

それが伝わっていないことも

あるんですね。

こんな口コミがありました。

「咳・鼻水で

ステロイドのシロップを

処方されますが、

怖いので飲まさずに

様子をみていたら

2日ほどで治りました。

それからは行ってません。(ちぃおお)」

私の真摯な診察処方の意味が

伝わっていなくて、実に残念です。

後付けで、結果どうであったかを言うのは

簡単なことです。

その時点での私の判断を

信用してもらえなかったことに

心が痛みます。

個人的な感想を世間にさらして、

私を傷つけるのが平気なヒトがいることを

哀れんでしまいます。

信頼関係。

それは患者から医師へだけではありません。

医師から患者への信頼もあるのです。

診察が混雑していると、

予約をキャンセルして

すぐ見てもらえる医院へ行く

ご時世です。

キャンセルして

他院を利用し、

結果、治らずに来院される

患者様が特に11月以降、

多いのです。

何故でしょうか。

私にはわかりません。

閑話休題・・・

横柄な世の中になったものです。

その時の医師の判断を理解せず、

匿名でヒトを中傷するような

口コミをするヒト・・・

残念でかわいそうでなりません。

不当に批判されるのは嬉しくないですが、

私は最新のエビデンスと経験則に基づいて

これからも医療を続けていくことに

変わりはありません。

「クスリ」は逆さに読むと「リスク」です。

常々、診察室でお話ししていることです。

危ないクスリなど、私は出しません。

最適と判断した処方しか、いたしません。

口コミに対する私の感想は

「失礼にも、程度がありますよ」です。

私は美辞麗句は嫌いなので

はっきりと言いますが

患者様は医師を選択できますが、

医師は患者様を選べません。

そういう事実は確かに存在します。

不具合があるなら、

直接私におっしゃってください。

私の説明と薬剤師の説明に

食い違いがあった場合には、

必ず、必ず、必ず、

もう一度、何度でも、

わたくしに

確認してください。

責任を持って、説明します。

私は、

ユニークさを忘れずに

診察を日々行っていますが、

言うまでも無く、

医療内容は真剣です。

標準的治療だけにとどまらず

最新医療のエビデンスと

これまでに培ってきた

経験則を総動員して

個別的治療対応の

バランスを考えています。

それが伝わらないのは

とても残念です。

私を信頼して

来ていただいている患者様なら、

理解していただけますよね。

ご理解いただければ、救われます。

医師であるわたくしも。