まぼろし

わたくしならば

幻に酔ってみたい

 

見たことのない色彩を放ち

触れたことのない感覚で

意識があるのかさえ

忘れ去ってしまうくらいの

幻に出会ってみたい

 

実存と観念の境目で

現実でも夢でもなく

恍惚とした光をあびながら

たとえ話を

バイオリンの音色で

奏でていたい

 

幻の中に

海や空があって

風が吹いていたなら

わたくしの感性は

その中に

溶けていくだろう

 

幻の中に消えるのは

わたくし自身では

ないかもしれない

 

それでも

わたくしならば

幻に酔ってみたい