もうサッカーできひんのか?

ずいぶん前のことだが

両足の感染性骨髄炎を起こした

サッカー少年がいた

 

歩くことも出来ない状態で

僕の前に現れた

 

二度も他院で見てもらったのに

なんたることか

二回とも鎮痛剤の処方だけで帰宅させられていた

発症の機転からすでに4日も経過していた

 

その時はじめて、

医師の倫理観とは何なのか

医師の能力とは何なのか

考え直す機会を得た

悔しくて悔しくて、寝られなかった。

 

車椅子の車輪を握りしめて

「もうサッカーできひんのか?」

 

サッカーどころか

敗血症まで起こしていて危険な状態

そんな質問に答えている場合でも

なかったが

ナイフで突き刺すような

まなざしとその言葉に

 

「できる」

と答えてしまった。

 

しかし

嘘は許されない

一緒に頑張った

 

六週間の治療と

それ以上の期間にわたるリハビリに

文句も言わずに頑張った

 

今は立派に

高校サッカーやっている

しかも、キャプテン

 

けがして相談しに来ることはあるが

元気にグランドを走り回っている

 

とにかくさあ、無理すんなよ