わたしにとって。

あなたのついた小さな嘘が

わたしを救ってくれました

あなたの見せた苦笑いが

わたしに真実を教えてくれました

ため息を一つ付いて

飲みかけのコーヒーカップを

最近買った文庫本の上に置いた

「冷たい水の羊」だっけ

158ページで止まったまま

シャワーで汗を洗い流し

お酒で喉を潤して

気持ちを切り替える儀式を終えると

夢の中へ逃げ去ればいいのです

そんな毎日が当たり前の日常

わたしはそれで

仕合わせなのでしょうか

わかりあうことを放棄して

わたしが仕合わせであればいい

それがわたしの暮らし

都会の雑踏の中で

個性が消えてゆくことに

いつの間にか慣れてしまった

見慣れた友達といったら

コンクリートの薄汚れたシミと

ビルの谷間の風

日の当たらない都会の片隅は

親しみのある居場所

社会との接点は

SNSとTik TokとYou Tube

ネットの情報が唯一の真実

わたしにとって。