アルペジオで弾く風景

駅のホームに立つと

淡い風が流れてくる

思い出が小さな竜巻のように

わたくしを取り囲んでは

流れていく

駅のホームに立つと

遠くを眺める癖がある

プラットホームの無機質な構造に

すぐに飽きてしまい

ホームの外へと視線が流れてゆく

子犬と散歩するときに

子犬の進みたい方向に

引き摺られていくように

わたくしの視線の先にある

遠くの風景が

謙虚さを失わないまま

ある種の慰めを感じさせる

目的の列車が

目の前に停車するまでの間

駅のホームに現れる

諸々のナラティブに

身を委ねることにしている