シールはどれがいいのかな
今日のシールは
ハートのデザインの入った
ピンクのシール
「僕いらないよ」
「トーマスのシールが欲しいよ」
「でも」
「やっぱり」
「ピンクのシールにするよ」
「トーマスは」
「また今度にするよ」
そう言って
風邪をひいた男の子は
なっとく顔で診察室を出て行った。
大体、一週間に一度
シールのデザインを変えているから
同じデザインのシールをもらうのは
あまり喜ばれない。
週に二度来院するということは
しんどいということだし。
でも、違うシールをもらうと
病気が治ったって思えることが多い。
はたまた、また
風邪ひいちゃったって
思うこともあるでしょう。
嫌なこと頑張ったから
ちょっとしたご褒美。
昔は飴をもらって
何だか喜んでいたことが
記憶に残っているけれど、
<飴ちゃんくれるし、がんばろ>
今のご時世
喉に詰めちゃいけないとか
いろいろうるさいから、シール。
シールの台紙は
元々はとがっていて、
そのとがった角で
けがをしてはいけないからと
スタッフが一枚一枚
手作業で角を丸くしている。
爪を切るような音が聞こえる時、
子どもたちが
せっかくもらったシールで
けがをしないようにと、
祈りの音が聞こえてくる気がする。
子どもたちの笑顔を想像しながら
一枚一枚、
手作業が続く。