ソクラテスの末路
奇妙な夢だった
以前から気に留めていた
P子がコーヒーを入れてくれた
嬉しそうに飲んでいる僕の姿を
ニヤニヤしながら見ているのだ
この世のものとは思われない
恐ろしい、ふしだらな目が
一部始終を観察している
次第に怖くなってきて
せっかくのコーヒーの味も
よく分からなくなってきた
舌がしびれるような感覚が
現れて、ろれつが回らない
そのタイミングを
見計らったように
P子は口を開いた
そのコーヒーはね
毒入りよ
高飛車に大声で笑う表情も
見えなくなった
P子は背中に隠し持っていた
中華包丁で切りかかってきたが
寸手でかわし
僕は床の上に倒れ込んだ
悪い冗談だよ、と言いたかったが
そのまま意識を失った
目が覚めると
いつもと変わらない
自分の寝室
ベッドの上で目を開けたまま
天井を見上げた
奇妙な夢を見たものだ
そのとき携帯が鳴り
相手はP子だった
おはよう
P子はそう言うと
続けざまに
コーヒー飲みたい?
と言って、笑った。