パラダイム・パラダイス

JRの駅前からバスに乗った

 

街なかの道路から

明かりが遠ざかり

短いトンネルを抜けた

 

そこからは勾配が

徐々に気になり始めた

 

山を切り開いて作った

旧 新設道路は

余りバスの揺れを

感じさせなかった

 

程なく到着したバス停から

右手に大きな建物を見上げながら

足取りを速めた

 

3階建ての小さなハイツの1階に

その部屋はあった

 

自由と友人で

毎日が埋め尽くされていた

 

その部屋にいつも誰かいた

 

だから、鍵もかけないまま

過ごしていた

 

勝手に出入りして

勝手に冷蔵庫を開け

勝手に酒盛りが始まり

 

たわいもない会話で

いつも盛り上がっていた

 

雑魚寝していた連中のなかには

突然起き上がって

帰って行くものもいた

 

何処に行くのも

何をするのも

誰も文句は言わない

 

いざこざは一つもなかった

 

言いたいことを

好きなだけ、言い合ってはいたが

皆お互いを認め合っていた

 

楽しかった

とにかく

パラダイスがそこにはあった

 

自由は

心に鍵をかけないことから始まる

 

それを学んだ