ビリヤードと寝不足と大学入試と医師国家試験

ビリヤードに

ナインボールという

やり方がある

9の文字が入った黄色い玉を

先に入れた方が勝ち

最初の一撃で9を穴に落として

勝つ練習を繰り返していた

少し斜めから菱形に並べたボールの

先頭の1をかすめて9に当て、穴に沈める

何故そんな練習を

毎日毎日していたんだろう

理由は簡単だ

一撃で仕留める快感

女の子にもてる

自分で自分がカッコいいと

自慢できる

それだけだ

だけど

快感・リビドー・自己顕示欲

これらは人生を踏みにじることがある

馬鹿な僕は大学入試の前日から

当日の朝までビリヤードに耽って

そのまま入試会場へ突撃した

予想通り撃沈

たいして難しくもない問題だったが

眠くて字が読めなかった

自業自得

一年棒に振った

その馬鹿さ加減

今は笑えるけど愚かしい所作だった

ただ、後悔はしていない

落ち込みもしなかった

大学入試なんて一年に一回あるから

そのときのビリヤードに対する情熱を

懐かしんでいる

愚かしい自分自身を愛おしく笑っている

しかし

この経験は後に生かされることになる

医師国家試験の時、

同じホテルの同室に泊まった友人の

いびきがうるさすぎて

全く寝られなかった

眠くてふらふらで

どうしようかと思ったが

ビリヤードの一件を思い出して、

目薬を頻回にさし、

唇を噛んだり、

大腿をシャーペンでついたり

しながら乗り切った

居眠りながらも

9割近くとれたから余裕で合格できた

まあ、人生何があるか分からない

だけどいろいろな経験をしながら

愚かしい自分自身を反省しながら

それを次に生かすことが

実りを与えることになるのは

間違いなかろう