ブロヴァンスの風
プロヴァンスを通り過ぎる
風を感じた
偏西風のような香りがした
暑さのせいだろうか
乾いた風が額の汗を拭った
見知らぬ街を歩いている
左手には女の手が
繋がっている
立ち止まって安堵の深呼吸
街角のカフェで
一呼吸置こうかと話すと
涼しい場所がいいと
左手に繋がった女が答えた
冷房の効いたバーに入って
ジャズピアノの演奏を聴きながら
カンパリーソーダを飲んだ
あなたって子供みたいだね
思い当たるところはいくつもあったが
苦笑いで気にしないことにした
店を出た
ここはどこだっけ
横須賀の夕暮れ
海岸線まで歩いて行こう
そしていつまでも
左手の温もりを確かめながら
しあわせを握りしめていよう
しあわせって
きっと握りしめて感じる何かね
女は哲学者気取りで微笑んだ