マホガニーからの伝言

わたくしはマホガニーに

心を寄せていた。

その気持ちを秘めて

生きていた。

マホガニーは遠いところへ

旅立った。

華やかな舞台に憧れ

自分の人生をスポットライトの

当たる場所に見つけた。

わたくしは相変わらずの

ぼろを身にまとい

寒空の下

マホガニーを想いながら

珈琲の香りに酔いしれている。

わたくしのことを

思い出してくれるひとときが

あなたにはあるのでしょうか。

そんなことを繰り返し想い

白いため息をこぼしながら

暮らしていた。

肌寒い部屋の中で

コートを着込み

窓辺から遠くを眺め

いつもの感傷を暖めていた。

単調な日々は

無限のループをかたどって

わたくしの姿はその中で

いっそう凍り付いていった。

ある日、一通の手紙が届いた。

ポストを開ける気になったのは

2年ぶりくらいだろうか。

自分でも理由など分からないけれど

とにかくポストを開ける気になった。

そこには、一通の手紙があった。

切手も貼られていない封筒、

中を開けてみると

メモ用紙の粗雑な切れ端に

見覚えのある文字を見つけた。

「あなたに逢いたい」と

一言だけ、綴ってあった。

<きっと、マホガニーからの・・・>

だけども、

どこにいるのかさえも

分からない。

返事のしようも無いその伝言を

コートの内ポケットに入れて

一冬過ごすことに決めた。

わたくしは相変わらずの

ぼろを身にまとい

寒空の下

マホガニーを想いながら

珈琲の香りに酔いしれている。

私に出来ることは

それくらいしかないことを

知っていた。