レクイエム

京都五山の送り火が

雨の中を燃え進んでゆく

 

俺たちに

レクイエムを

語らせてくれ

 

あいつは

何も言わずに

山を越えていった

 

もう逢えないのさ

 

だけど

 

雨が降り始めたときの

アスファルトの匂い

 

雨が止んだ後

虹の向こう側

 

だけど

 

夜空を眺めたときに

流れゆく流れ星

 

夜を見上げたときの

下弦の月

 

山の向こうから

手を振って

合図してくれると

 

俺は思うんだ

 

あいつは

何も言わずに

山を越えていった

 

もう逢えないけど

 

思い出の中で

安らかに眠れ

 

お前の分まで

俺たちが

引き受けたから

 

今、この瞬間

少しだけ

少しでいいから

 

俺たちに

レクイエムを

語らせてくれ

 

おまえへの

花束の代わりに

 

京都五山の送り火が

雨の中を燃え進んでゆく