反響する木霊

渓谷から山々に向かって

大声で言葉を投げかける

言葉自体には何ら意味のない

掛け声のようなものである

言葉はハレーションを

起こすことなく

リフレクションして

遠ざかっていくと同時に

自分の耳にも帰ってくる

自分の掛け声が

他者からの掛け声となって

意味は変容し

どうしてか、心が晴れる

声は双方向に自然空間を包括し

ユートピアな雰囲気を醸し出す

犬ならば

自分の発した音と認識するだろう

あるいは仲間の叫びと曲解して

さらに遠吠えするだろう

猫ならば

絶対音階を持つために

自分の発した音とは気づかず

無関心に走り去るだろう

人間は

ヒトであるがゆえ

自分の発した声と

理解していながら

すでに別のものとなって

回帰していると認識する

“言霊が木霊している” と

そんなふうに認知する

アニミズムに起因する

宗教観は なるほど

人間のDNAのみに

刻印された深淵なる秘境

我々はそこに存在し

言霊と木霊のハーモニーに

心打たれる