古風な呼び方
「ぬれ布巾、使われますか」
ヌレフキンって?
そうか、
ウエット・ティッシュのことか
お若い人の
レトロな言い回しは
上品な気がして
うれしくなった
古風な呼び方の使える人は
きっと
古風に住まうことのできる
ひとなんだろうと
想像してみた
春なら
お花見にハイキング
もちろん手作りのお弁当
夏なら
うちわに蚊取り線香
冷えた緑茶にスイカ
秋なら
お月見に土瓶蒸し
紅葉の移ろいに和服姿
冬なら膝枕に耳かき
先にお布団を暖めておく
気づかい
どれもこれも
映画や小説の中でしか
知り得たこともないフィクション
無縁であった現実に
ため息が溢れ出す
平成が終わろうとしているのに
振り返るのは昭和的発想ばかり
平成は振り返る価値がある時代
だったのだろうかと
考えてしまう
昭和は
心が、
ひとの振る舞いが、
豊かだったイメージが残る
平成にそれを求めても
思い当たる節がない
仕事だけの毎日で、
それ以外何も覚えていない
思い出したくなるのは
昭和ばかり
自分の内面を見渡すかぎり
昭和は自分なりに総括できるが
平成はそれができない
平成より昭和の方が
心が豊かだった
平成の次に訪れる時代に
心の豊かさが
期待できるだろうか
それにしても
いまどき
こんな大和撫子
どこを探せば
生息しているだろう
四つ葉のクローバーを
探すより
ずっと
きっと
難しいに違いない