家路
夕空が綺麗だ
水性絵の具の青と朱色と白で
無造作に筆を走らせた
キャンバスのように
戯れる前衛芸術
・
ずっとそのまま
見ていたいけれど
僕には家路が待っている
果てなく続くこの道
・
見上げていなくたって
この道は
空まで繋がっているのだろう
・
一本道が限りなく続いている
家路が果てしなく続いている
とにかく車を走らせる
何も考えなくても
やがては海にたどり着くだろう
・
少し砂浜で休んだら
船に乗り込んでみるつもりだ
そこから先は想像もつかない
・
本当は想像しなくてもわかっている
・
夕空のキャンパスと繋がるまで
オールをゆっくり漕いでゆく
絵の具は持ち合わせていない
荷物は全て砂浜に置いてきた
・
たどり着いたら
手のひらを大きく開いて
キャンパスにいたずら書き
どんな色彩を放つのか
楽しみにしておこう
・
家路は夕空へと続く道
いつか空へとたどり着く